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手書きの売上メモを、写真で月の数字に——「Excelができない」小さな事業の見える化

公開 2026/10/03 / 更新 2026/10/19 / 執筆:宇川 和樹(合同会社アプローズプロモーション・名古屋)

売上はノートに書いてある。仕入れのレシートは箱に入っている。数字はちゃんと残しているのに、「先月と比べてどうだったか」が答えられない——家で小さく商売をしている方、小さなお店を一人で回している方から、よく聞く状態です。

「見える化したいけれど、Excelができない」「数字を打ち込むのが大変だから、写真を撮って入れられたらいいのに」。AIの使い方を話し合うオンラインの集まりで、先日そのままの言葉で相談が出ていました。半年ほど前にも、別の方が「毎日つけているExcelを、月ごと・年ごとにまとめたい」と相談していました。 同じ悩みが、別の人から繰り返し出てきます。

この記事では、手書きのメモや写真から月ごとの数字にするまでを、費用のかからない順に3段階で書きます。

この記事の要点(先に結論)

  • 困っているのは「Excelが苦手なこと」ではなく、毎日の記録と、月の数字の間を人が電卓でつないでいることです
  • 直し方は3段階です: ①紙のまま、月に1回まとめる欄を決める(費用ゼロ)→ ②スマホのAIに写真を読ませてみる → ③撮って送るだけで月の表に積み上がる、小さな専用の道具にする
  • 境目は、2つの問いで分かります。確定申告の前に、去年の数字を探すところから始めているか。 先月いくら残ったかを、いま3秒で言えるか。 どちらか1つでも詰まるなら、記録はあっても積み上がっていません
  • まず用意するものは、ノート1日分の写真1枚だけです。それで「うちの字で読めるか」まで分かります

困っているのは「Excelができない」ことではありません

足りないのは、記録を月ごとの1枚の表にまとめる手間のほうです。1日分なら数行ですが、1か月分を並べて足し上げるのは、電卓とにらめっこする作業になります。忙しい月ほど後回しになり、数字が一番見たい時期に、数字が無いことになります。ですから「まずExcelを覚えましょう」は遠回りです。覚えても、毎日打ち込む手間は残ります。本人の言葉どおり、「書いたものを撮るだけ」で済む形を目指すほうが、続きます。

忙しい月ほど、数字が抜けます

月末のまとめを、忙しい月は飛ばして年に7〜8回にしているなら、1年のうち4〜5か月は、数字を見ないまま過ぎています。

しかも飛ばすのは、決まって忙しい月です。一番売れた月と、一番仕入れた月ほど、記録が抜けます。 本当は一番見たい月です。

高くつくのは、まとめる時間ではなく、そこで見逃す中身のほうです。目安として、こう数えてみてください。

材料費が1個20円上がると、1日20個・週5日・4週で1か月8,000円。気づくのが4か月遅れると、32,000円ぶんを同じ値段のまま売っている。気づくのが1か月遅れるごとに8,000円
材料費が1個20円上がると、1日20個・週5日・4週で1か月8,000円。気づくのが4か月遅れると、32,000円ぶんを同じ値段のまま売っている。気づくのが1か月遅れるごとに8,000円

たとえば、小麦粉やバターが上がって、1個あたりの材料費が20円増えたとします。1日に20個ほど売っていれば、週5日で月およそ400個。気づくのが1か月遅れるごとに8,000円、4か月遅れれば32,000円が、値段を据え置いたまま消えます。値上げするかどうかは別の話ですが、上がったこと自体を知らないまま売り続けるのとは違います。

「売れていない曜日に仕入れていた」も同じです。数字が見えないまま次の月に入ると、気づくのが数か月遅れます。この損は件数で数えられないので、いつも実際より小さく見積もられます。

写真・手書きのメモから、月ごとの表にすると

たとえば、こんな1日分のメモがあるとします。以下はすべて架空のデータです。

9/11(金) 売上 8,400円(現金 5,200・PayPay 3,200)

仕入 2,800円(材料)

これを毎日写真に撮っておくと、月末には次のような形になっている——というのが目指す姿です。週5日の営業で、月に20日あまり。 上のような日が続けば、月17万〜18万円ほどです。よく売れる月は、もう少し伸びます。

月ごとの数字の見本(架空のデータです)

  • 7月 売上 186,000円 仕入 58,000円 差し引き 128,000円
  • 8月 売上 204,500円 仕入 61,300円 差し引き 143,200円
  • 9月 売上 171,800円 仕入 55,900円 差し引き 115,900円

この3行があるだけで、「9月は売上が落ちたけれど、仕入れはそれほど減っていない」ことが一目で分かります。Excelの操作は1つも要りません。 要るのは、毎日のメモを撮ることだけです。

ただ、この3行を毎月書き続けるのは、簡単ではありません。 忙しい月があれば、その月の行が空きます。むずかしいのは3行の形ではなく、その3行がどこから湧いてくるかのほうです。ここからは、そこを埋める順番を3段階で見ていきます。

見える化の3段階

上から順に、手のかけ方が「紙とノートだけ」から「専用の道具」へ上がっていく3段階。第2段階と第3段階のあいだに境目があり、そこから先は自分たちだけでは続かない
上から順に、手のかけ方が「紙とノートだけ」から「専用の道具」へ上がっていく3段階。第2段階と第3段階のあいだに境目があり、そこから先は自分たちだけでは続かない

第1段階: 紙のまま、月に1回まとめる欄を決める(費用ゼロ・今日できる)

ノートの最後のページに、月ごとの「売上」「仕入」「差し引き」の3列だけを書いた表を作ります。月末に、その月の合計をここへ1行だけ書き写します。

これだけで「先月と比べてどうか」は見えるようになります。限界は、月末の足し上げそのものは残ることです。忙しい月には、この1行が書かれません。

もう1つ、材料の値上がりは、仕入の合計だけを見ても分かりません。作った量が増えれば合計も上がり、減れば下がるので、値上がりの分はその上下に紛れます。それでも、仕入を売上で割って「売上に対する材料費の割合」にすれば、この3列からでも見えます。 ただ、月末の作業に、その割り算が1つ加わります。 忙しくて月の1行が書かれない月は、割り算も一緒に抜けます。

第2段階: スマホのAIに写真を読ませてみる

ChatGPTなどのAIアプリに、メモやレシートの写真を渡して「日付・売上・仕入を表にしてください」と頼む方法です。手で打つよりずっと速く、うまくいくと驚くほど正確に読んでくれます。

ただし、ここには落とし穴があります。AIは、読めなかった数字を「それらしい数字」で埋めてしまうことがあります。 相談された方も、有料のAIを試したものの「もっともらしい間違いばかりで役に立たなかった」とおっしゃっていました。

そのため、この段階では読み取った結果を、必ず元の写真と1行ずつ見比べることが前提になります。

この段階の本当の限界は、3か月ほど続けたときに出てきます。 出方は3つです。

  • 先月の分が、どの会話にあるか分からなくなります。 毎回の会話はばらばらに残ります。探すより撮り直すほうが早い、となった時点で、先月との比較は止まります
  • 見比べをサボった月から、表が信じられなくなります。 1か月でも混じれば、そこから先は「たぶん合っているはずの数字」です。自分で信じられない表は、やがて開かなくなります
  • 結局、ノートと電卓に戻ります。 不便になって終わるのではなく、始める前の場所に戻るのが、この段階のしまい方です

第3段階: 撮って送るだけで、月の表に積み上がる道具にする

パソコンは出てきません。家の台所で、スマホ1台で終わる形にする段階です。1日の終わりの3コマで書くと、こうなります。

  • 1コマ目: 撮る。 その日のメモを、いつものカメラで1枚撮って送ります
  • 2コマ目: 並べて見る。 送った写真と、AIが読み取った「日付・売上・仕入」が、上下に並んで出てきます。目を往復させずに確かめられます
  • 3コマ目: ちがう所だけ直して登録する。 合っていればそのまま、ちがう数字だけ指で直して登録します。登録した分はその月の合計に足され、月の表で先月・前年の同じ月と並びます

ここまで、スマホの画面から出ません。月末に足し上げる作業そのものが、もう出てきません。

月の表には、売上に対する材料費の割合も毎月並ぶので、作った量の増減に紛れず、値上がりが効き始めた月が見えます。

積み上げた記録を探さずに引き出す道具としては、工務店向けに、過去の見積をその場で検索して自社の様式のまま再発行できるツールを試作しました。

工務店向けに試作した、見積の検索・再発行ツールの画面。型番で検索すると、過去に出した見積の日付・単価・元の見積書が並ぶ(画面はサンプルデータ)
工務店向けに試作した、見積の検索・再発行ツールの画面。型番で検索すると、過去に出した見積の日付・単価・元の見積書が並ぶ(画面はサンプルデータ)

なお、手書きの字の癖や、レシートの種類によって読み取りやすさは変わります。どこまで自動にできるかは、実物の写真を見てからお答えします。

「道具にする」境目はどこか

境目は2つ。確定申告の前に、去年の数字を探すところから始めているか。先月いくら残ったかを、3秒で言えるか。どちらか1つでも詰まるなら道具の側。どちらも詰まらないなら、ノートかAIアプリで足りる
境目は2つ。確定申告の前に、去年の数字を探すところから始めているか。先月いくら残ったかを、3秒で言えるか。どちらか1つでも詰まるなら道具の側。どちらも詰まらないなら、ノートかAIアプリで足りる

第1段階と第2段階は、自分だけで始められます。では、どこから先が自分では続かないのか。 今日その場で答えられる問いが2つあります。

1つ目は、確定申告の前に、去年の数字を探すところから始めているか。 箱からレシートを出し、ノートをめくり、月ごとに足し直す——毎年そこから始まっているなら、記録はあるのに積み上がっていない状態です。第2段階のAIアプリを足しても、ここは変わりません。「写真と結果を並べて確かめ、確かめた分だけを残す」場所がないので、読み取った数字は会話の中に流れていき、来年の申告前にもまた、探すところから始まります。確かめていない数字で出した「見える化」は、見えないより判断を誤らせます。

2つ目は、先月いくら残ったかを、いま3秒で言えるか。 言えないまま、値段を決める、仕入れを決める、家族や税理士さんに見せる、確定申告の書類を作る、融資の相談に持っていく——数字が外に出たり、お金の判断に使われたりするたびに、数字を作るところからやり直すことになります。毎月同じ形で、同じ手順で積み上がっていれば、この作り直しが丸ごと消えます。

どちらの問いにも詰まらなかったなら、ノートかAIアプリで足ります。どちらかで詰まったなら、確かめる場所と、積み上がる場所——第3段階の道具にする値打ちが出ます。

ご相談いただいても、「ノートの最後のページに月の欄を作るだけで十分です」という見立てになることがあります。 月末のまとめが苦になっていないなら、道具は要りません。

よくある質問

Q. 何から手を付けるか、そもそも分かりません。

同じ悩みへの答えを中小企業のAI導入は、何から始めればいいかに書きました。道具を選ぶ前に、今やっている作業を書き出して回数を数えるところから始めます。

Q. Excelを覚えたほうがいいですか?

覚えなくて大丈夫です。第1段階はノートとペンだけ、第3段階は撮って確かめるだけです。Excelが得意な方なら第2段階の結果をExcelに貼るのも手ですが、苦手なまま続けられる形を選ぶほうが、長く続きます。

Q. 会計ソフトを入れれば解決しませんか?

レシートの読み取りができる会計ソフトもあります。「先月と比べてどうだったか」「材料の値上がりがどれだけ効いているか」に毎月答えられるかは、どのソフトを入れるかより、次の2つがそろうかで決まります。毎日の手書きの売上メモが、撮るだけで月の表に積み上がること。月ごとの材料費の割合が、自分で割らなくても並ぶこと。 会計ソフトを入れる場合も、この2つと並べて使う形にすれば、月末にノートと電卓へ戻らずに済みます。

Q. 手書きの字が汚くても読めますか?

AIの読み取りはかなり強くなりましたが、字の癖や書き方によって差があります。だからこそ、確かめる場所が要ります。 実物を1枚見せていただければ、どのくらい読めそうかをお答えできます。


オンラインでも、名古屋近郊であれば対面でも承っています。

「うちの帳簿でもできるか」を知りたい場合は、いつもつけている手書きの売上メモか帳簿を、1日分だけ写真に撮ってご用意ください。 要るのはその1枚だけです。あわせて、「月に一度、これだけは見たい」という数字を1つ(売上の合計・仕入れとの差・曜日ごとの売れ方、など)教えていただければ十分です。その写真がどのくらい読み取れそうか、見たい数字まで自動でつなげられるかを、その場でお答えします。

写真やファイルは、[email protected] 宛にメールでお送りいただいても構いません。

この記事と同じ「打ち直しをなくす」話を、事務の現場の目線で書いたものが紙とExcelの二重入力をなくす、いちばん現実的な順番です。

「うちの場合はどうか」は、状況を伺うのが一番早いです。
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